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腎代替療法

腎機能が悪化し、自分の腎臓では体の環境が維持できなくなったとき、腎臓の代わりをする治療が必要になります。それを腎代替療法と呼び、腎代替療法には透析療法(血液透析と腹膜透析)、腎移植(献腎移植と生体腎移植)があります。急性腎障害の場合、通常は腎代替療法のうち血液透析を行いますが、原因に対して治療を行い腎機能が改善すれば、透析を離脱(透析せずに自分の腎臓の機能のみで生命を維持できる状態になる)できる可能性があります。しかし、慢性腎臓病が進行し腎代替療法が必要になった場合は、腎移植を行うか、定期的な透析療法を行わないと、生き永らえることはできません。

どの治療法を行うかは、医療者と患者さんが相談し決めていきます。その際、医療者は腎代替療法に関する知識と経験を十分に説明し、患者さんは自身の生活や価値観、大事にしていることなどを医療者に伝え、医学的なエビデンスだけでなく患者さんの生活や価値観を考慮した最良の選択ができるよう、意思決定の共有(Shared decision making:SDM)を行います。

透析療法には血液透析と腹膜透析があります。血液透析には施設透析と在宅透析があり、施設透析では主に週3回(月水金もしくは火木土)透析施設に通い、1回あたり4~5時間の治療が行われます。在宅透析は一定期間トレーニングを行った後に、自宅で透析を行う方法です。どちらもバスキュラーアクセスといって、血液を大量に取り出す経路が必要になり、それを作るための手術を行います(代表的なものがシャントと呼ばれる血管です)。

腹膜透析は腹部にカテーテルと呼ばれる管を埋め込む手術を行い、透析液をお腹の中に入れて貯めておくことで毒素や余分な水分が染み出すため、ある程度時間が経ってからそれを捨てて新しい透析液を入れる、ということを繰り返す治療法です。お腹の中で尿を作っているようなイメージです。液の交換は1日3~4回ですが、ライフスタイルに合わせて時間が調整でき、また夜間に機械を用いて自動的に交換するという方法もあります。通院が月1~2回でよいため、生活の自由度は高くなります。

腎移植は末期腎不全に対する唯一の根治治療です。腎移植には献腎移植と生体腎移植があり、献腎移植は亡くなった方から腎臓を提供してもらう方法で、生体腎移植は親、兄弟、などの親族や配偶者等から腎臓をもらいます。本邦では全体の約90%が生体腎、約10%が献腎移植です。拒絶反応を抑えるため、免疫抑制薬を飲み続ける必要がありますが、移植後の成績もよく、生存率の改善、合併症の減少など、透析と比較するとメリットが大きい治療になります(詳細は日本腎臓学会日本移植学会などをご参照ください)。

腎代替療法が必要になった時点で、それをしないという選択もあります。しかし、腎代替療法が必要な状態、ということは、治療をしなければ数週~数か月のうちに命を落とす、ということです。患者さん本人だけでなく、ご家族も含めた話し合いを繰り返し行い、医療者も適切な情報提供を行うことで、本当に腎代替療法を行わないかどうか、合意を形成していきます。腎代替療法を選択しない場合は、保存的腎臓療法(Conservative kidney management:CKM)といい、透析や腎移植を行わずに医療チームがケアを継続し、患者さんの生活の質と症状のコントロールに焦点を当てたケアを行います。よりよい最期を迎えられるよう、医療チームがサポートします。

当科では腎代替療法説明外来を行っており、通常の外来受診の時だけでは説明しきれない腎代替療法の詳細を、医師、看護師が丁寧に説明いたします。受診をご希望の方は、和歌山県立医科大学附属病院予約センターまでお問合せください(原則的に地域の医療機関からの紹介状が必要になります)。