講演要旨
8月12日(月曜日?振替休日)
13:00~ 無限の彼方を考えてみると ― 射影幾何学の世界 ― 数学?統計学教室 武田 好史
“無限の彼方”といってもそれは何もファンタスティックな絵空事ばかりではありません.実際,15世紀のルネサンス初期において絵画の世界に導入された透視図法にみられる“消失点”は正に無限の彼方そのものです.後にそれらの概念は数学の理論体系として整理され,19世紀には“射影幾何学”という名の幾何学の一分野が成立しました.この様な成り立ちからわかるように,射影幾何学の特徴は無限の彼方(無限遠点)を考えるところにあり,その幾何学の世界では,「平行線は無限の彼方で交わる」こととなります.
即ち,通常のユークリッド幾何学においては「異なる2直線は,平行ではない場合は1点で交わるが,平行な場合は交わらない」のように場合分けされた表現となる命題が,射影幾何学においては「異なる2直線は1点で交わる」の様に場合分けの必要もなく,単純明快な表現となります.
実はこれに留まらず,射影幾何学の世界はある意味で確かにファンタスティックな“数学の理想郷”であることを簡単な例で紹介します.
14:45~ ナノスケールで炭素をあやつる 化学教室 大町 遼
物質?材料の分野で主役となる元素は年代を経るとともに移り変わり、19世紀は鉄の時代、20世紀はケイ素(=シリコン)の時代、そして21世紀は炭素の時代と言われています。その炭素原子を六角形の蜂の巣構造でナノメートルサイズで繋げた物質は「ナノカーボン」と呼ばれ、これまで注目を浴びてきました。ナノカーボンにはナノサイズだからこそ現れる不思議な性質が存在し、代表例であるフラーレンやグラフェンはノーベル賞の対象にもなりました。現代の基礎科学において一大分野を築いているだけではなく、近年では実用化や産業レベルでの研究も展開されており、社会実装が進みつつあります。
本公開講座では、化学の視点から「ナノカーボン物質をつくり、ナノスケールで形や構造をあやつり、性能を引き出す」という点に着目し、実用例も紹介しながら基礎的な内容を中心に解説していきます。
講演要旨
8月12日(月曜日?振替休日)
13:00~無限の彼方を考えてみると
― 射影幾何学の世界 ―
(数学?統計学教室 武田 好史)
“無限の彼方”といってもそれは何もファンタスティックな絵空事ばかりではありません.実際,15世紀のルネサンス初期において絵画の世界に導入された透視図法にみられる“消失点”は正に無限の彼方そのものです.後にそれらの概念は数学の理論体系として整理され,19世紀には“射影幾何学”という名の幾何学の一分野が成立しました.この様な成り立ちからわかるように,射影幾何学の特徴は無限の彼方(無限遠点)を考えるところにあり,その幾何学の世界では,「平行線は無限の彼方で交わる」こととなります.
即ち,通常のユークリッド幾何学においては「異なる2直線は,平行ではない場合は1点で交わるが,平行な場合は交わらない」のように場合分けされた表現となる命題が,射影幾何学においては「異なる2直線は1点で交わる」の様に場合分けの必要もなく,単純明快な表現となります.
実はこれに留まらず,射影幾何学の世界はある意味で確かにファンタスティックな“数学の理想郷”であることを簡単な例で紹介します.
ナノスケールで炭素をあやつる
(化学教室 大町 遼)
物質?材料の分野で主役となる元素は年代を経るとともに移り変わり、19世紀は鉄の時代、20世紀はケイ素(=シリコン)の時代、そして21世紀は炭素の時代と言われています。その炭素原子を六角形の蜂の巣構造でナノメートルサイズで繋げた物質は「ナノカーボン」と呼ばれ、これまで注目を浴びてきました。ナノカーボンにはナノサイズだからこそ現れる不思議な性質が存在し、代表例であるフラーレンやグラフェンはノーベル賞の対象にもなりました。現代の基礎科学において一大分野を築いているだけではなく、近年では実用化や産業レベルでの研究も展開されており、社会実装が進みつつあります。
本公開講座では、化学の視点から「ナノカーボン物質をつくり、ナノスケールで形や構造をあやつり、性能を引き出す」という点に着目し、実用例も紹介しながら基礎的な内容を中心に解説していきます。