医療開発薬学

研究室紹介

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研究室の概要

顔写真今井 哲司 教授

医療開発薬学研究室では、薬剤師が感じている課題や問題点(クリニカルクエッション)を抽出し、『神経科学や薬理学』を基盤とした先端的手法により解決策を導き出して、それらの情報を臨床現場に提案することを目指しています。主な研究テーマは、末梢神経障害(感覚障害)あるいは不眠症の発症メカニズム解明と新規治療戦略の探索です。いずれの疾患も国内外に多くの患者が存在しますが、それぞれの発症メカニズムについては未だ不明な点が多くあります。また、高い効果を示す原因治療法が存在しない、あるいは既存の治療薬の選択基準が明確ではないといった問題があります。私たちはこうした課題に対峙するために、1) 各種疾患モデル動物の行動解析、2) 感覚神経3次元培養(オルガノイド)、3) アデノ随伴ウイルスを用いた各種神経の蛍光識別化、4) 光遺伝学的手法による神経活動のリアルタイム解析を組み合わせ、本質的な病因を探る試みをしています。さらに、臨床で切望される「発症メカニズムに基づいた新規治療戦略」や、より有効かつ安全な治療薬の選択基準について提案することを目指しています。このように当研究室では、いわゆるリバース?トランスレーショナル?リサーチを推進しています。

研究においてポイントとなる単語?言葉

神経科学、薬理学、光遺伝学、リバース?トランスレーショナル?リサーチ、末梢神経障害、痛み、不眠症、感覚神経オルガノイド、アデノ随伴ウイルス、オレキシン

教育の内容

治療標的の探索、候補薬の選定、臨床試験を経て患者に使用されるまでに、どのようなプロセスが存在し、薬剤師?薬学研究者としてどのように貢献できるかについて理解を深められるような講義を行います。薬剤の治療標的分子の発見といったミクロの世界から、患者集団に対する薬剤投与の影響(治療効果、副作用)といったマクロの世界までを薬理学に基づき考察できる能力を養成します。また、臨床現場での課題や患者?家族が抱える悩みといった、より実践的な事項について学習し、先導的役割を果たす医療人に足る資質?能力を養成します。

研究の内容

新規3次元感覚神経オルガノイドを用いた末梢神経障害の機序解明と新規治療戦略の提案

末梢神経障害は、抗がん剤の投与、糖尿病発症、ウイルス感染、遺伝的要因によって引き起こされ、陽性症状(痛覚過敏など)と、陰性症状(感覚鈍麻など)が混在した複雑かつ慢性的な病態を示します。しかしながら、それらの発症機序の全容解明には至っておらず、原因治療法は存在しません。最近私たちは、末梢神経研究の推進のためにより最適化された感覚神経3次元培養(オルガノイド)の構築に成功しました。このオルガノイドを構成する各種神経細胞群をアデノ随伴ウイルスにより蛍光識別して、ミクロな病的変化をリアルタイムで観察し、本質的な末梢神経障害の発症機序を探索しています。さらに、新たに発見された治療標的や発症機序に基づいた新規治療法の創出や、ドラッグ?リポジショニングという視点から既存薬のより有効な使用法の提案を目指しています。

光遺伝学的手法を用いた不眠症メカニズムの解明と睡眠薬使用における選択基準の構築

不眠症は身体的要因(糖尿病、疼痛)、薬理学的要因(ステロイド剤投与)、心理的要因(ストレス)などによって引き起こされます。人や高等動物の視床下部には睡眠中枢と覚醒中枢が存在し、これら領域の神経活動のバランスによって睡眠と覚醒のサイクルが制御されています。しかしながら、各種不眠症の発症において、睡眠/覚醒中枢にどのような異常が起きているのかについて不明な点が多くあります。また、臨床では多くの睡眠薬が使用されていますが、それらの選択基準は明確ではなく、漫然と使用されるケースも少なくありません。我々はこうした問題を解決すべく、光遺伝学的手法(ファイバーフォトメトリー法)を用いて研究を推進しています。ファイバーフォトメトリー法とは、アデノ随伴ウイルスなどを用いてマウス脳内の特定の神経細胞群を標識し、脳内に留置した光ファイバーを通して動いているマウスの神経活動をリアルタイム計測する手法です。この技術と脳波?筋電図測定システムを併用して、不眠症の発症時に睡眠/覚醒中枢の神経活動がどのように障害されているか解析しています。また、脳組織標本を用いた病理学的所見や、マウス脳波解析による睡眠/覚醒状態の解析結果も併せて不眠症の発症機序の探索や、各種睡眠薬の有効性の検討を行なっています。さらに、こうした基盤的基礎研究の成果に基づき、医師や薬剤師と連携して、不眠症患者を対象とした前方視的な臨床試験を実施し、より効果的な不眠症の薬物療法の提言を目指しています。

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